サバティエ触媒反応

再生可能エネルギーを燃料ガスの形態で貯蔵するPower-to-Gasコンセプトが注目されており、その中で、サバティエ触媒反応は、二酸化炭素と水素からメタンを生成する技術として重要な役割を担います。触媒にはニッケルなどが使用されますが,炭素析出など課題も多く、新たな触媒の開発が求められています。本テーマでは、薄膜技術とマイクロ流路を駆使して、これまで注目されてこなかった金属におけるサバティエ反応の可能性を探ることを目的としています。

・壁面衝突噴流型リアクターを用いたサバティエ反応発現の調査

はじめに、壁面衝突噴流反応装置を用いたサバティエ反応の研究を行いました。図1に、実験装置の模式図を示します。本装置は、同軸噴流装置、加熱壁面装置、マイクロガスクロマトグラフシステムにより構成されています。N2で希釈した当量比1のCO2/H2混合気(CO2 : H2 : N2 = 3:12:10)をNi薄膜、Niを含む合金であるSUS321の薄膜およびNi合金であるInconel600の薄膜を蒸着した石英基板に対して垂直に噴出しました。また、環状ノズルからは、整流用のN2を流しました。その結果、Ni、SUS321、およびInconel600すべての金属表面でサバティエ反応が確認されました。特に、インコネルは触媒安定性が高く、高温条件ではCOの生成量がニッケルよりも高くなることが分かりました。また、図2~図4は、この実験を模擬した触媒反応を組み込んだ数値解析による比較を行い、それぞれの金属表面におけるサバティエ触媒反応モデルの構築した結果です。

図1 壁面衝突噴流型リアクターの模式図

図2 Ni表面における実験・数値解析結果

図3 Inconel表面における実験・数値解析結果

図4 SUS表面における実験・数値解析結果

・マイクロ触媒リアクターを用いた種々の金属表面におけるサバティエ反応の解明とモデリング

上述の実験では、ガスの滞留時間が短くメタンの生成を確認するのは困難でした。図5~図6に、現在、実験で使用しているマイクロ触媒反応器の模式図を示します。より反応性を高め、触媒面積・温度を精緻に規定しつつサバティエ反応を評価可能なマイクロ触媒反応器を用い、インコネルなどの合金に特に焦点を当てて調査を進めています。




図5 薄膜を有する石英ガラス製マイクロ触媒リアクター

図6 マイクロ触媒反応リアクターテストベンチの全体図